【アマチュアアカペラでお金を儲ける事についての意識調査】

に関するアンケートをネット上で実施した.
その結果を報告する.



【経緯】
報告の前にこのアンケートを実施するに至った経緯について述べておく.


きっかけは背徳の薔薇のJぺいさんのこちらのツイート.
(※話題自体の発端ではないとは思われる)

【アカペラでお金を儲ける】

がタブーっぽくなっているという事を知らなかったため,このツイートを読んで私は驚いた.
そしてこの後,どうやらアマチュアアカペラをやっている人の中には「アマチュアアカペラでお金を儲ける事を良く思っていない人」がいるという事を知り,その理由が気になったため,アンケートを実施することに決めた.

また,この話題に「イベントや大会の審査に対する不信感」も関連してきているようなので,そちらについても設問を設定した.
のだが,こういったご指摘を頂いた.

>不満を集めるアンケートならタイトルにその旨記載したほうがよろしいかと。

仰る通り記載すればよかったです.
今後は気を付けます.

【設問内容】

以下の7問.

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1.
ライブ,イベント,大会等を通じてアマチュアアカペラでお金を儲ける事について
【肯定的だ/どちらかと言えば肯定的だ/どちらかと言えば否定的だ/否定的だ】

2.
その理由をなるべく具体的に教えてください.
【自由記述】

3.
ライブ,イベント,大会等を通じて(対等ではない価値のやり取りがされているという意味で)搾取されていると
【強く感じる/やや感じる/殆ど感じない/全く感じない】

4.
その理由をなるべく具体的に教えてください.
【自由記述】

5.
審査方法に不満を感じているイベント,大会を全て選んでください.
【Acappella Spirits!/Japan Acappella Movement/KAJa!/ソラマチアカペラストリート/甲州アカペラサミット/金沢アカペラ・タウン/FAN(名古屋アカペラフェスティバル)/ハモサツ/hopefultone, GrowingSound
/その他(次の設問にイベント名,大会名を書いてください)】

6.
どういった点が不満か,また,どの様に改善される事を期待するか,なるべく具体的に教えて下さい.
【自由記述】

7.
最後にアカペラ歴を教えて下さい.
【リスナー(聴き専)/1年目/2年目/3年目/4年目/5~7年目/8~10年目/11年目以上】
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【結果と個人的感想】
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1.
ライブ,イベント,大会等を通じてアマチュアアカペラでお金を儲ける事について
【肯定的だ/どちらかと言えば肯定的だ/ どちらかと言えば否定的だ/否定的だ】

2.
その理由をなるべく具体的に教えてください.
【自由記述】
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1

報告資料①

クリックorタップでリンクから資料にアクセスできます.

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私の意見としては「肯定的だ」である.
お金を儲ける事ができるようになる事は,アカペラが文化として発展していくために必要だと思うからである.
その根拠の1つがこちらの意見
>どちらかと言えば肯定的だ:専業でイベントを運営する人間が必要だと考えているためです。多くのイベントのボランティアの学生で運営されていますが、彼/彼女らは学業やアルバイトと、さらに自分のサークル活動との両立を迫られ、大きな負担となると想定されるためです。(すみませんぼくはイベント運営関わってないんで憶測です)  また、JAM2015では運営に支障が出ていたようですが、あれは前年からの引き継ぎが上手くいかなかったらしいと関係者から聞いています。それらを踏まえ長期間、腰を据えてライブ、イベント運営に時間を割ける人間が必要になると考えた場合、職業や収入源としてアカペラを活用するのは必至ではないかと判断しました。( 4年目)
の黄マーカー部分である.
文化の発展にはイベントや大会の質が高まっていく事が必要で,そのためには,「学生ボランティア主体の運営が必要不可欠であるものばかり」の状況から脱していく必要があると考えるのだ.

また,
>どちらかと言えば肯定的だ:需要供給がマッチしているならいいと思います。むしろアカペラ好きのイベンターが大赤字でやるのが価格崩壊おきて反対です。
こちらの意見のように,赤字を前提でやる事は商業化の障壁となり,文化の発展の障壁となるためなるべく避けるべきだとも考える.


次に否定的な意見を見ていくと
>どちらかと言えば否定的だ:アマである以上お金儲けはできない。金儲けをするのはプロ。それだけのクオリティも必要。(3年目)
こちらのように,アマチュアアカペラ自体が"アマチュア"である点を問題視する意見が幾つかあるが,それは質問の意図とはズレてしまった回答だと思う.
そういう人は"アマチュア"向けの楽器を製造している会社も非難するのだろうか?
そんな事はないだろう.

プロであるイベンターの運営などがプロの癖に拙いという事を非難しているのであれば筋は通るが,拙い運営であれば淘汰されていくのではないだろうか?
むしろ,お金儲けを肯定していく方が,競争が激しくなり,より質の高いイベンターが増えていくという風に考えるのが自然ではないだろうか?


他にも「私にとっての音楽・アカペラの理念にそぐわないから」的な個人的感情が多くあり,イマイチピンと来ない中,こちらの意見には目を引かれた.
>どちらかと言えば否定的だ:音楽的である/なしに関わっておらず、ネズミ講のような仕組みがあるように感じる。また、 楽譜等権利的にも怪しいことをやっていながら、あたかも当然の権利であるように振舞っているイベンターが多い。このまま続くとアカペライベント自体に規制がかかりそうで、それは避けるべきであると思うから。(4年目)
まず赤マーカー.
ネズミ講は言い過ぎであるが,確かに"不健全さ"感じる部分はある.
ライブのノルマのために友人などにお金を使わせる事が必要となる仕組み,投票審査のために少しでも多くの友人などにお金を使わせる事が必要となる仕組み等.
こういったものは他業界でもよく見られる話,アマチュアアカペラに限らない話で,逆に言えば完全に健全な商業等は存在しないという風にも考えられる.
肯定的だが,「なんか嫌だな」と思うところ自体はどうしても存在するといった所だろうか.

次に黄マーカー.
私も,もしお金儲けを非難する意見を出すならば,同様に権利的な部分を挙げると思う.
アマチュアアカペラは小規模なためにお目こぼしを頂いている,著作権的には(親告罪という意味で)グレーな文化であるため,それを用いてお金儲けを続け,仮に規模が物凄く拡大していった場合,いずれ規制をくらうと思う.
お目こぼしを頂いているという認識,謙虚さを持った上で,元著作権者にもリターンがあると思わせる形で発展していく事が必要なのではないかと考える.
具体的には,例えば演奏楽曲の楽曲名・著作者の公表を義務づけたり,動画審査の際に権利者に広告収入がいくように設定したり,等.


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3.
ライブ,イベント,大会等を通じて(対等ではない価値のやり取りがされているという意味で)搾取されていると
【強く感じる/やや感じる/殆ど感じない/全く感じない】

4.
その理由をなるべく具体的に教えてください.
【自由記述】
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2

報告資料②

クリックorタップでリンクから資料にアクセスできます.


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私の意見としては,「全く感じない」である.
"搾取"という言葉をどう捉えるか,によって変わってくるかとも思うが(特に実際の意味よりも軽々しく使う事が多いため),"対等ではない価値のやり取りがされているという意味で"言えば全くそんな事はないと思う.

この意見に完全に同意だ.
>全く感じないそもそも搾取されたくないならライブに出ない、観に行かない、大会に出ない、観に行かないという選択がある。アカペラをやりたいだけなのであれば、諸大会など大きな権威に取り込まれないことも可能ではある。それでもその流れに自ら入り、搾取されていると叫ぶのは、お門違いではないか。そのような大会で結果を残したいが思うように残せていないジレンマから搾取されていると思うしかないのではないか。(8~10年目)

次に「強く感じる」「やや感じる」の意見も見ていくと
>やや感じるたいしてうまくないのに出さしてもらったから(5~7年目 )
>下手くそな自分のグループが本戦に残りうまいグループが本戦に出場できなかったから(2年目)
これは謙虚なだけでは?汗
判断の方法はないので考察は不可であるが.

>強く感じる明確にならない支出の部分が多すぎる、応募後の金額の発表などは特に理不尽に感じる( 4年目)
支出が明確でないと搾取に感じるというのを自分は理解できないのだが,これは法律的に?倫理的に?そういうのがあるのだろうか?
今,私が食べている「ばかうけ」について私は原材料費も設備投資額も輸送費も何もかも知らない.が搾取とは感じない...
ただ,「応募後の金額の発表」といったものがあり,それが支払わざるを得ないものであるのであれば,取引として良くないと思う(搾取とは話が違うと思うが).
イベントや大会で必要となるお金,なり得るお金については予め明言して頂く方が良いと思う.

やはりあまりピンとこない意見が多いが,そんな中
>自分自身が運営にすこし携わっていたからこそ、対等ではないことは明らかだとわかるから(5~7年目)
「対等」というものをどう捉えるか,どう考えるかがやはり肝となる感を得る.
具体的に書いてないため,今回この事について具体的に考える事はできないが...


全体として,「審査に不満があるため搾取されていると感じる」という内容の意見が多く,これは次の設問に関連してくる.


(その他諸々に対するコメント)
ゴシップ誌じゃないんだから汗


あと,全く関係ないが
>全く関係ないのを承知で言いますと、主催者が最後に長々と話すのを聞かなければいけないのがとても苦痛である。(4年目)
めちゃくそ分かる笑

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5.
審査方法に不満を感じているイベント,大会を全て選んでください.
【Acappella Spirits!/Japan Acappella Movement/KAJa!/ソラマチアカペラストリート/甲州アカペラサミット/金沢アカペラ・タウン/FAN(名古屋アカペラフェスティバル)/ハモサツ/hopefultone, GrowingSound
/その他(次の設問にイベント名,大会名を書いてください)】

6.
どういった点が不満か,また,どの様に改善される事を期待するか,なるべく具体的に教えて下さい.
【自由記述】
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3

報告資料③

クリックorタップでリンクから資料にアクセスできます.


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私の意見としては「無し」である.
ただ,全てのイベントや大会が自分の理想の審査だ.という訳ではなく,各イベントや大会それぞれに色んな事情で色んな審査が存在している事に対して不満はない.という事である.

>大会によって基準は様々なため、自分のバンドを良く審査してもらえる大会に出ればいいと思う(3年目)
こういった風に前向きに捉えていきたい.

意見を見ていく.

>下手なバンド(音痴、リズムがバラバラ)が出ている点、もっとハモリがキレイなバンドが出るように改善すべき(5~7年目 )
こういった審査結果に対する不満が多々あるが,それは貴方の好みの話ではないか?笑
審査結果というのは,"審査結果が正解"なのだから,好みが合わないのは分かるが,仕方が無い事だと割り切るしかないと思う.
自分の好みの審査結果のものに赴けば良いと思う.

>ソラマチなどでもサークルごとに一バンドは、出せるようにして1つもサークルが出れない事態を避けるべき。(3年目)
根拠が不明.

>JAMの実地審査に出場した際、パーカスのフィルが甘い。と一言のみの講評で落選した。何も納得が出来なかった。大会に対してマイナスイメージが付いてしまった。(5~7 年目)
これは可哀想.私自身頭を悩ませて1次審査でコメントを考えたが,とてもじゃないが全ては伝えきれないため,不満を持たれている可能性は大いにある.
解決方法があればよいのだが.

>やはり審査員の好みなのかはと思う時が時々ある。技術の審査項目をもっと細分化すべきではないかと思う(4年目)
こういったような審査に対する議論は興味がある.
審査項目を細分化する事によるデメリットも当然ある.
一体どんな審査が理想なのだろうか?今後私も考えていく.

>JAM=今年の音源審査、審査員との相性もあるだろうし、運の部分が大きい。何度もチャンスがあるというが、就活生等には負担だろうな。( リスナー(聴き専))
沢山の審査員に審査されるのも運の部分があるかもしれないが,過去のように1人の審査員に審査されるのも同様に運の部分はあるのではないだろうか.
どちらの方が運の部分が大きいかは明確に判断できないのではないだろうか?

>サークルの知名度補整をはじめ、音響設備の充実度の違い、アカペラについてのノウハウ、経験の差で、動画審査において不遇の扱いをされるサークルは多いと思います。審査動画について平等を期す努力が必要だと考えます。(3年目)
設備の充実度の違いとか言い始めたらキリがないし,機会の平等のための活動は運営の仕事ではなくないか?

>●●などは代表が汚すぎる。改善策として、他に競合できるような法人がアカペラ業界に参入することで、淘汰されていくことを期待する(3 年目)
設問1,2で述べていたのはこういう話である.
運営や審査に不満がある人はむしろお金儲けを肯定すべき立場だと考える.

>基本的に不満は感じていないのですが、強いて言えば審査方法の記述をもう少し具体化させれば良いのではないかと思います。(例:「動画審査の為、音源だけでなく視覚的なパフォーマンスも審査の対象になり得ます」「雑音やマイクの調整不備などで音質・音量バランスが著しく悪い場合、減点対象とします」「必ず1曲を通して全て視聴します(途中で飛ばしたりしません)」など) 特にAcappella Spilits!の場合、動画公開から予選通過バンド公表までの期間が短く、公平に全ての動画を見ていないのではないかという不信感が強まっていると感じている為、このような表記の配慮はあるに越したことはないかと考えます。(5~7年目)
これは面白い意見である.特に黄マーカー部分を書いて安心させるだけならば費用はかからないし,実際にイベント運営者に提案したら採用される可能性もある.
ただ,他の案は書いていなくとも,そのあたりを考えながら挑むのが前提だと思っているので個人的には書く必要を感じない.

書くだけで安心して頂けるのであれば,私の審査のスタンスについて今ここで述べておくと,
・全てのバンドをあらゆる意味で平等に審査します.
・最初から最後まで真剣に聴きます.

という事でよろしくお願いします.


(その他感想)
根拠のない噂や偏見については議論不可なので触れる事ができない.
私自身も経験がないため何も言う事ができない.

1つ確かなのは,
よりよい音楽・アカペラを追求するにあたって審査結果はおまけ
と考えるべき,という事である.
様々な憶測・噂に振り回されるよりも,自らが追求していきたいものが結果として認められたり認められなかったりする方が,健全である.

しかし,審査で勝ち抜く事を最優先の目標とするならば,それはそういった闇に足を・首を突っ込むしかないかもしれない.

何を大事にし,何を目的に歌を歌っていくのか,この記事が考え直すキッカケとなれば幸いである.


【結論】  
目的としていた「アカペラで儲ける事に対する批判に対してピンとくる」は殆ど達成されなかった。

ただ,批判の感情の元となっているものの中には"審査"に対する不信感が多分に含まれているという事は分かった.

私個人としては,音楽に優劣をつける事自体が元を辿ればナンセンスだと思うし,賞レースにとらわれ過ぎず各々の思う音楽を追求していく事が大事だと感じた.
ただ,私自身のリスナー的観点として「好きなアカペラを見つけられるのでそういうバンドが大会に出てくれると(探す手間が省けて)助かる」と思っており,こういったリスナーの甘えた姿勢もまた,賞レースの過度の重要視に繋がってしまっているとも感じた.

以上.

【最後に】
ご意見ご感想,Blogのコメントでも,Twitter(@nu__cappella)のリプライでもお待ちしております.
また,記事の内容について消して欲しいものがある団体・個人の方もご連絡ください.
個別に対応いたします.

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審査員や講師としての活動については、以下の記事にまとめています。