JAM2017,1次審査(6月募集分の7月審査)審査員をやらせて頂いた.

助言は1つだけ,
音源はモノラルにしよう.



Japan A cappella Movement2017公式サイト


JAM運営には,口外厳禁事項(※自分がつけた点数のみ)以外は何をweb上で言ってもらっても構わないという事で,自由に思った事を書いた.
また逆に,この記事がJAM運営に依頼されて書いたものだとか,検閲されているという事実も無いので,その点ご理解頂きたい.


1.唯一の助言
音源はモノラルにしよう.

元々私自身も音源審査用の音源はパンを振った方が(基本的には)良いと思っていた.
(パンを振るというのは例えばトップコーラスは右から,セカンドコーラスは左から聴こえる,とかいう事である)
ハモリを脳内で合成する必要があるため,左右で別れていない方がよい.だとか賛否両論あるのは存じているが,完全に振るのではなく,少しでも左右で分離させておいた方が広がりが出るし,より感動的に伝わると思っている.
実際のアカペラライブでは,パンを振ると観客の位置によってバランスが変わってしまうため,
振られない訳だが,音源審査では大丈夫だろうと思っていた.

実際,一昨年までのように1人の審査員による審査の場合,それで良かったと思う.
ただ,今年のJAM1次審査は,3人が同時にスピーカーから出た音で審査するので,
モノラルの方が良いという,何の変哲もない話だ.
JAM以外でも,審査方法が不明なものには,モノラルで出した方が無難だという事だ.
(いやいやちゃんとした審査ならパン振ってある事も想定した審査状況にするよ!というご指摘.私もそう思う)

((((
「スピーカーから出た音で審査する」
という情報は,私みたいな人間にとっては重大な訳だが,世間では出回っていないし,JAM運営もわざわざ自らは公表していないし,世間では大して重視されていないのだろうな.
因みにモノは多分これ


尚,BASSのつまみは切ってあった.
))))


1.感想
もっとえげつない事を見いだせれば良かったのだが,それには至らなかった.
助言というにはおこがましいので,以降は個人の感想とさせて頂く.


2.1.音源の質に差があり過ぎ
これはアカペラのレベルとかではなく,レコーディング・マスタリングの話.
※尚,審査とは関係ない"という事に"はしておきたい
本当にビックリするほど差があってビックリした.
皆さんがどの程度の意気込みで応募しているのかは分からないが,そりゃあよくできた音源の方が良いですよ勿論. 

リードが移ったらコーラス馬鹿でかくてリード聴こえないみたいな音源より,フェーダーをスッと調整してある様な音源の方がそりゃあ良いですよ.

如何に審査には関係は無い事にしておきたくとも,アカペラの実力と,音源の質は,はっきり言って 
明確には分離できない
ただ,一方でどういった音作りが好かれるとか,嫌われるとかいうのも審査員によってはあると思うので,何が正解という訳ではないが,まぁ一般論として,なるべく良いレコーディング・マスタリングを行う方が良いと思われるという話. 
余りにも当たり前だが.


2.2.そのベースの音作りどうなん?
音作り関連でもう1つ.
何より気になるのがベースのもわもわしたいかにも
「低い音出してますよ~」
と言いたげな音.
日本の学生アカペラで最もポピュラーな音作りである.

百歩譲ってコーラスとベースが完全に乖離している激しめのロックみたいな曲ならともかく,バラードとかで,コーラスは豊かにふんわりハモっているのにベースだけ唸っているの
滅茶苦茶勿体なくない?




「音作り」と書いたが,これは勿論歌い方も含む問題である.
過去のJAM2次審査員も以下の様に述べている

北村嘉一郎氏
////////////////
4、ベースの歌い方
ベースのピッチが悪いグループが多く見受けられました。ベースとコーラスの調性が完全に分離してしまって、ハーモニーがわからなくなっています。原因の一つには、ベースボーカルの多くが、「マイクを口につけている」ということがあると思います。どこで習ったのか、ベースはマイクをつけなければならないと思いこんでいる人が多いようです。特に関西のグループには非常に多い。僕はよほどの熟練者で「意図」がない限り、口をつけるのは反対です。つけてしまうと、音が歪んでしまい、こもった音でピッチがわかりにくくなります。熟練していれば、音響エンジニアと共に特殊な技術でサウンドを作ることができ、また、それを音楽に取り入れたりもしますが、一般の人には無理です。
私の意見としては、ベースもピッチがわかるようなクリなサウンドを目指すべきで、そのために少しだけ(小指一本分の距離)を空けて、PAの音量を少し上げて音を作る方がよいと思います。
////////////////

引地洋輔氏
////////////////
1 トータルサウンド
ビートボックス、ボイスパーカッションの進化には驚かされるばかりです。
初めて聴く人の興味をひく上で大きな武器になることでしょう。
新しいサウンドが生まれていることは、とても素晴らしい!
 
しかしながら、その武器が「全体サウンドの中でどういう効果を与えるか」はもう少し考える余地がありそうです。ビートボックスに連れてベースにも言えることですが、低域のブースト感が強すぎて、元来アカペラが持っている和声の魅力が失われるのはもったいない
5人、6人の声が塊になって響きを生んだときの感覚を大切にしてほしいと思いました。
もちろんすべて悪いというわけではなく、うまく使いこなすことが必要だということです。
それによって全体のサウンドにさらに幅を持たせることもできるでしょう。
////////////////
JAM2014 2次審査総評より引用)


果たしてそのベースの音は,そのバンドの目指す音楽に適しているのか?
一考の余地があるのではないだろうか.


2.3.サビだけハモるバンド
多い.
サビがハモるのは勿論素晴らしい.ただ,欲を言えばAメロからハモって欲しい.
理由として,「決め所だから沢山練習する」「音域が丁度良い」等幾つか考えられるが
最たるものは
「フォルテじゃないとハモれない」
であると思う.
ピアノの部分を如何にハモるかを意識した練習が必要である.


2.4.入りがハモらないバンド
絶対に録音しなおした方が良い.
どうしてもハモらないなら,ハモるようにアレンジを変更すべきだ.

また,JAM2013,2014 1次審査員よう いんひょく氏は以下の様に述べている.

////////////////
少し残念に思ったのは、今年もやっぱり「入り」でした。
ベースの入り、リードボーカルの入り、コーラスの入り、いろいろありますが、
特に「曲の入り」。
2番を歌っている頃にはまるで違うグループだと感じるほどに、音楽になるまで時間がかかっている印象でした。
最初のフレーズから音楽になるよう作れれば、グループが大きく変わると思います。

もしかしたらその原因はアレンジにもあるかもしれないとも思いました。
アカペラアレンジは、オリジナル曲以外の場合、楽器だったものを声にしているわけですが、そんな中でも、「歌」として存在していることが大事だと思います。
「楽器のフレーズを声に変えただけ」ではなく、「歌にする」ことを意識してアレンジすることで、すごく変わると思います。
////////////////
JAM2014 1次審査総評より引用)

「わざと最初はしょぼく抑える」という作戦もあるとは思うが,かなりリスキー.
ラストにかけて相当な盛り上がり・裏切りがないと失敗に終わるという事は認識しておくべきである.


2.5.決め所をミスるバンド
本当に勿体ない.ブレークとか,転調とか,滅茶苦茶難しいけれど(自戒の念を込めて),やはり何とか頑張らないといけない.
本来加点ポイントのはずが,減点ポイントになってしまうので,相対的に大きな減点ポイントになってしまう.


2.6.ハモり方が1種類のコーラス
歌い方や発声的に得意なハモり方が確立されているバンドは,それに頼りがちである.
「ブランディングの一環として」「ボロを出さないため」
等,作戦の1つとしてはありだと思うが,ハモりの幅を広げた方が,音楽的には幅を広げられる.

「発声的に」変化を加える事についてイメージが湧かないのであれば,例えば「Aメロは自分の胸に抱きしめるように」「Bメロは笑顔で」「サビは遠くの人に届けるように」といった様な感情的な面から入ってみるのもアリかと思う.


2.7.正統派スタンダードなハモネプ的アカペラ
未だにこういったバンドが主流であるという事に驚いた.
しかし,こいったものは,
「本当に滅茶苦茶上手い」「仕掛けを作る」
かしないと(決勝までいくのは特に)厳しいだろう.
審査上,今までのアカペラ界や審査員自身のコンテクストが評価に影響する事がどうなのかと
議論はあると思うが,,,色々抜きにしても,それでもやはり,ただ,厳しい.

あと,リードがアカペラをバックにカラオケしているバンド.
一概に非難されるべきではないとは思うが,アカペラの審査としてはどうしても不利だ.



(一時休憩)

∫(インテグラル)は神.


ぱっぱらららっぱ~


2.8.審査項目はそれぞれ関連している
(折角審査員をやらせて頂いたのに審査員ならでは的な事を全然書いていない事に気がついた)
こんな事を言ってしまって(モラル的に)よいのか分からないが,事実だからこの際はっきり述べておく.

JAM2017の1次審査は審査項目が細かく別れており,これを参考にバンドも今後何を強化すればよいか
考える指針になるのではないだろうか.
ただ,できればその点数がどういった意味を持ちうるか,まで考えて欲しい.
例えばハーモニーの点数が低いのは,ピッチ感の問題なのか,発声の問題なのか,はたまた
編曲の問題なのか.
審査員もコメントで可能な限り書いて頂いていると思うが,何せ時間が限られるので書ききれていない.
し,音源だけでは分からない事も沢山ある.

他にも極端な話で言うと,
編曲が0点なのに,表現力が満点のバンドは多分存在しえない.
他の項目0点で,魅力だけ満点のバンドも多分存在しえない.
この重複しちゃうじゃねぇかというのが審査としてどうなのか,という議論はまた今度にして
(そもそも審査として項目分けに意義があるのかという議論もまた今度にして)
実際の状況も考慮した上で点数を受け止めるべきである.


2.9.審査員としてのフィードバック
JAMの1次審査という大したものをやらせて頂いた癖に,私は審査の経験というのが殆どない.
殆どないが何回かはあり,その数少ない経験から,
「審査員が成長する機会ってあまりないな...」
と思っていた.
無論成長の余地がある人間は審査員として相応しくないし,弱音を吐いている訳ではない.
ただ,思っていただけ.

今回の審査は,他の審査員お二方の結果と含めた平均点がいずれ公開されるので,それを確認すればお二方とはどの程度差異があったかは確認できる.
そういう意味でフィードバックがあるため,参考にできるな,と感じた.

参考にできるな
とか思ってるようなやつが審査員を受けてはいけないという意見もありそうで
審査員としてどういった人物が相応しいか,という議論に繋がっていく訳だが,それはまた今度.


まぁそんな審査員というものに対して懐疑的な目を向けている皆さんも,兎にも角にもJAM2017はまだ2回の1次審査応募チャンスが存在するので,応募バンドにとって都合の良い審査員(含みがある)に当たる可能性を上げるためにも,残り2回とも出した方が良いでしょう.

録音頑張ってください.


2.10.成長したいならば審査員をしろ
プロになるかBOJ取るか,またはそれに類する様な結果を出さないと審査員になれないというのに,無茶苦茶言うな!と怒られそうだが,これはJAMに限らずという意味である.

審査,とまでいかずとも,他のバンドの演奏を聴いてどういった観点で評価できるか,問題点は何かを考えろ.
という事である.
※ただこれが癖になってしまうと,アカペラを純粋に楽しむのが困難になってしまう恐れはある.これをバンクリ病と言う(私が今名付けた).

何やら関西のどこかのアカペラサークル(誰か教えて下さい)→教えて頂きました!
同志社大学アカペラサークルでは,1年生の頃からサークル内の他のバンドの審査や演奏についてコメントシートを書くという話をきいた.
そういったような観点を持つ力というのは,必ず自らのバンドの成長にも結び付けられる.
※ただアマチュアアカペラばかり聴いていると脳がアマチュアアカペラ馬鹿になり,視野が狭くなる恐れがある.これをアマチュアアカペラ視野狭窄病と言う(私が今名付けた).

私の場合,なんと偉そうな事に1年生の頃既に他のバンドにアドバイスを求められて,一生懸命考えたりしていた.
また,アカスピ関東の動画を全部見て,独自に採点をするという事をしていた(半ば狂っている).
他の評価をするというのはおこがましい事に思えるかもしれないが,非常に身になるので,是非オススメしたい.


3.最後に
ここまで読んで頂けた様な酔狂な方々に,深くお礼申し上げたい.
意見・反論・質問等,BlogのコメントでもTwitter上でのリプライでもお受付致します.
どうぞお気軽にご連絡ください. 
______________
アカペラ練習方法講座動画

______________
YouTube(リンク)
多重録音アカペラや、たむらまろの演奏動画の他、アカペラ講座やイベントリポート等、アカペラに関する動画を上げています。
今、自分が一番力を入れている活動です。良ければ覗いてみてください。

Twitter(リンク)
主にアカペラに関する事を様々呟いています。

Instagram(リンク)
各種活動の裏側を投稿しています。
既に私の事を知ってくださっている方向けです。

●審査・講習
審査員や講師としての活動については、以下の記事にまとめています。