このツイートについての記事.

巷では全然話題になっていないので,やはり本当に,既に世間では常識なのかもしれない汗
時代についていけてない人々に対して,これがどういった意味か,説明する. 

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端的に言えば
音源審査への提出音源は,録音後にガッツリ編集してから出すべきである
という事である.

C754_mixer_TP_V

写真素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)photo Tsuyoshi.
今まで,
音源はいじって良いのか?
という暗黙の議題がアカペラ音源審査において存在していた(と私は思っている).
そして,その一つの回答が今,世界に示された.

日本最高峰のアカペライベントKAJa!(外部サイトリンク) のチャレンジ企画であるKAJa!チャレンジ2017(外部サイトリンク)の募集要項から,音源についての記述を以下に抜粋した.

b-2. 録音について
KAJa!チャレンジ 2017 本番で歌う曲を全て、1曲ずつトラックに分けて録音してください(曲全ての総分数が 10 分以内に収まること)。

(カバー曲・オリジナル曲は問いません。曲中の編集は不可。)
審査対象の曲目以外は、録音しないで下さい。
レコーディング技術を確認するためのものではありませんので、必要以上のエフェク ト(本番で再現不可能なもの)や、以下のような曲中の編集は不可とします。
(例1) ピッチを機械で調節する
(例2) 何度か録音を行い複数の音源の良い部分をつなぎ合わせて曲を作成する。
(例3) 録音後にエフェクタ多重録音を行うなどの編集をしている。


これをどう読み解くか,過去に多くのアカペラーが悩みあぐねたであろうと思う(私だけ?).
具体的に例が挙げられている項目については駄目であるというのは分かるが,では書いてない項目は良いのか??

逆に書いてある事を,アホみたいに厳密に読み解くならば,
 
※再現不可能なものは審査対象外
というのは,本番でも録音時と同じ機材同じミキサー操作を行わなければ再現不可能なので,
全バンド審査対象外.とも取ることができる.(そんな訳はないが)

また,
エフェクタ多重録音
という言葉が用いられているが,KAJa!2015の募集要項では
エフェクタや多重録音
という風に書いてあったのが変更されていた.

エフェクタが駄目となったらどこからどこまでがエフェクタなのか?という哲学的議題と向き合う必要がある.



まぁ,素直に読み解けば,

録音した音源はいじらないで提出してね,
レコーディング技術を確認するためのものではありませんので
そのまんまでも実力をしっかり聴き分けるので大丈夫ですよ.

という風に取れるので,これが恐らく今までのアカペラ界の基本的な解釈だろう.


しかしこれからは違う.


KAJa!2017特別アカペラレコーディング無料体験会
と題して行われた レコーディングイベントの要綱(外部サイトリンク)
●録音した曲の音質、音量調整
を行うと書いてあったのだ.

つまり,
アマチュアアカペラ界の基準を示すKAJa!自身が公式に,録音後の編集を推奨しているのだ.

また,先日そのレコーディングイベントのレポート(外部サイトリンク)が公開された.
そこには

パーカスの音色が、どんどん変わっていきます。※これはテンションがあがります!

イコライザーを使って音色を細かく調整、キックを重くして、スネア、シンバルの音の抜けよくして…

コーラスラインの音量のバランス整えて、リバーブ量の調整をして…

どんどんプロミュージシャンの音源と同じようなクオリティーになっていきます。

等,ゲイン,EQ,空間エフェクトを録音後の各パートに個別にかけている事が分かる記述がある.
これはもうお墨付きだ.
審査提出音源はガッツリ編集するのが既に世界の常識
なのだ.
レコーディング技術を確認するためのものではありませんので
等という文言をストレートに捉えている人は馬鹿正直というものだ.
レコーディング技術を確認するためのもの
ではなくとも,
レコーディング技術・音源編集力は審査に影響する.
間違いなくする.

あえてエアーの音源を録音して「若干聴き取りにくいけど上手いっぽいな?」的な作戦もあるかもしれないが,基本的なライン録音であれば,如何に上手いっぽく編集するかが多大な影響を及ぼすのは間違いない.

「音源審査で誤魔化しても実地審査でばれる」

と仰る方もいらっしゃるだろうか.
そりゃあ実地審査をぶっちぎりで通過できるバンドなんかは,音源審査がそこそこでも通るだろうけれど,
殆どのバンドはそんな事ない.
はっきり言って団子だ.
拮抗した戦いの中で,使える武器を使わないのは,勇気ではなく,無謀だ.
例えば大学生活を懸けた青春の勝負に,何故少しでも有利になるような形で挑まないのか?
私には理解できない.


全力で挑むというのは,そういう事だろう?




(しかも音源審査のみ・動画審査のみのイベントも沢山存在するしね)


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ようは録音後に,良く聴こえる様に編集しろという話だが,そのためにはこういったレコーディングスタジオを利用するか,
そういうレコーディング・ミキシングができる人を探して頼むか,
自分でやるしかない.

自分でやる場合にまず問題となるのは,「通常のライン録音では各マイクの音をミキサーからまとめて出力するため,各パートを別々に録音できない」点である.
各パートを別々に録音するには,マルチトラックレコーダー



という機材が必要である.
因みに私は3年前からこの機材を持っている.これがどういう事を意味するかはーーー

その上で,パソコン上で編集・ミキシングをする必要がある.
これはDAWと呼ばれるソフトを用いて行う.
DAWは無料のものもあれば,何万円もするものもあるが,音量を調整したり,EQを少しいじったり,リバーヴをかけたりする程度ならば,
無料のもので十分可能である.


多くのアカペラーは音源編集に対する意識が低いが,これを機に変わってくるかもしれない.
(そういう私も素人なので,日々修行である)




Blogの本旨とは関係のない余談:
この記事が何を意味するか分かった人にとって,私は大悪人であろう.
サークル員に対しては,通常のライン録音の方法を紹介する動画を撮影し,公開したりしていたのだ.
偽善者を通り越して,もはや詐欺.
大きな信頼を失うかもしれない.
弁明の余地はない.

しかしそうなるとしても,どこかでこのモヤモヤを発散したい3年間だったのも確かだ.
また,世界には他にも似たような心境の人は沢山いるんだろうなとも思う.


今回はピッチ補正については触れなかったが,ピッチ補正も上手い人がやればバレないし,
仮にガッツリピッチ補正してある音源だとしても,それを審査側は証明する事はできない.
(自宅に押し入って編集ファイルを押収するくらいしか方法はない)

今後,音源審査編集合戦が過熱してくるとしたら,不幸ながらもそれは自然な流れだと思うし,
それをキッカケに新たに議論が盛り上がればいいなと思う.

私としては,この問題に対する回答を持っていない.

盛大な投げっぱなしのまま,筆を置くことにする.

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